ワクワク心が動かされる1時間。シーカヤックで体験する世界遺産・嚴島神社

短時間で体験できる、小さなアドベンチャー

時間の限られた人でも、アウトドアスポーツが初めての人でも手軽に挑戦できる人気のシーカヤックツアーを発信する「HARTアドベンチャー」。宮島の嚴島神社そばをカヤックで行くプランを作った末田佳子さんは、ご主人と広島のアドベンチャーツーリズムの礎を築いた方でもあります。ツアーの魅力と、宮島に対する愛情など、お話を聞きました。

カヤックを初体験した時の衝撃

末田さんは広島出身で、自然体験を提案する「HART(ハート)アドベンチャーセンター」を2005年からご主人と運営しています。ご主人はカヤックツアーの先導を、末田さんは業務全体を総括しています。元々お二人は、ダム湖や河川のコンサルティングをしていました。水面を活用する事業の開発をするなかで、初めてカヤックを体験した時のことは、今でも鮮烈な記憶として残っているそうです。「深い山々の素晴らしい景色の中で水の上を漕ぐ浮遊感。とても楽しくて、忘れられない体験でした。その衝撃は大きかったです」と末田さん。もっと自然を知りたい、近づきたいとカヤックを購入し、やってみないと始まらない、と2006年にシーカヤック体験プログラムの事業を始めました。

ハートという会社名に込めた想い

会社名の「HART」は、HeartのH、ArtのA、ResortのR、TrailのT。「ハートは心です。アートは私も夫も美術畑で、夫はグラフィックデザイン、私は日本画をやっていて、今でもアートは私たちの大切な一部です。リゾートは心休まる場所であればという願い、トレイルは繰り返し道を往く、という意味なんです」。ツアーは、宮島を観光で訪れて、ちょっとシーカヤックを体験してみたい人にピッタリの内容になっています。気軽に参加できるのに、旅の思い出に大鳥居を迫力ある角度から臨む絶景体験。アウトドアスポーツをやり慣れている人向けというよりは、初体験でいい思い出を作ってもらい、また来てもらいたい、まずアウトドアの素晴らしさを味わってもらいたい、という思いが、敢えて短めの時間で設定したツアーにこもっているそうです。

宮島の空気感に惚れ、宮島の自然を海からも開拓

この地に拠点を構える前に、町家を借りて11日間を過ごし、長い滞在にも関わらず全く飽きなかった、と言う末田さん。風景の移り変わりが美しく、気さくな土地の人々と触れ合いました。観光地であることから、田舎とも都会とも言い切れない不思議な距離感もあり、その感覚が新鮮だったそうです。宮島の魅力にますます引き込まれた末田さん、シーカヤックを宮島で始めた原点は、1990年に湯来町の山奥を開墾した時でした。その土地を「すみれの谷」と名付け、できる範囲で楽しみながら自然の良さを伝えたい、として始めたのが『リバーアドベンチャー』、川の中を歩くプログラムやカヤックを体験することができます。カヤックの魅力に引き込まれたご夫妻は、太田川流域でも子供向けのカヤックによる教育プログラムを行う中で、まだまだ気づかれていない広島の自然の魅力を、海からも開拓してみようということになりました。地元の仲間やNPOの助けも得ながら海のカヤックツアーを開始。雑誌の取材をきっかけに知名度が上がったそうです。どんどん忙しくなりましたが、ツアーは今でも参加者の大半が初心者。ギアもウェアも揃っていて何も持たずに参加できることと、穏やかな瀬戸内海がもたらす安心感の表れでしょう。

スポーツもアートも、「心が動くもの」を目指して

2013年ごろにピークを迎え、忙しく日々を過ごしたお二人でしたが、最近はそろそろ若い世代に引き継ぎたいと考えています。担い手の問題はありますが、次世代に伝える魅力の火を消したくはない、と言います。人材育成は大きな問題ですが、少人数ながら若いガイドも来てくれているので、できる限りアウトドアの種は撒き続けたいそうです。「『心が動くもの』として、アウトドアでもアートでも、ワクワクが大切。アドベンチャーセンターと大層な名前がついていますが、雨の日のプログラムではアートやクラフトの作品作りをしたり、色々な種類の小さな冒険を提案していきたいんです」と言います。

ワクワクする体験は、参加者も自分も同じ

まず自分がワクワクしたい、という末田さんは、HART(ハート)をいつまでも大切にしていきたい、と、そのためにはカヤックは重要なツールだそうです。「参加者の感想はいつも新鮮です。大鳥居のことを『水から生えてるみたいだね』なんて、面白い表現をしてくれたり、気づきを与えてくれるんです。外国の方の感動、リアクションはひとしおで、それもありがたいですね。お客さんと関わることによって、その魅力を再認識しています」と言います。このツアーは、「初めて」がキーワード。フレッシュな宮島が見つかる気軽な1時間カヤック、一度体験してみませんか。