異次元の空間から未知の風景をみる日本に一つだけの乗り物 HANAIKADA と、船でいく宮島神社巡り

海に浮かぶ孤島のようなHANAIKADA

瀬戸内の穏やかな海に浮かぶ牡蠣筏に着想を得て設計された、日本に一つだけの乗り物 HANAIKADA(花筏)。船で巡る神の島・宮島の神社巡りと、まるで海に浮かぶ静かな孤島のような HANAIKADA の上での時間がセットになったプラン。そのキーとなる HANAIKADA 誕生にかけた思いなどを伺いました。

世界の人々を魅了する牡蠣筏がアイデアの源

まったく新しい乗り物「HANAIKADA」。「桜の花びらが、川や湖に浮かんで流れていく花筏という言葉から名づけました。これまでにない新しい船の形です」、広島県廿日市で観光会社 You-Be に勤める船長の藤里さんは、日本中探してもここにしかない筏型船舶HANAIKADAについて語ります。

HANAIKADA は宮島周辺で、宿泊施設など観光業を営むYOU-Be株式会社の藤里さんたちが、牡蠣筏に着想を得て、その設計からすべてをオリジナルで創り出した新しい乗り物です。牡蠣筏とは、瀬戸内の名産品である牡蠣を育てる、竹で編んだ格子状の筏。海が穏やかな瀬戸内海ならではの養殖方法で、陽光を浴びて幾つもの筏がキラキラと海に輝くさまは、心安らぐ日本の風景として親しまれてきました。コロナ前には宮島周辺をクルーズする海外からの観光客も多くきており、外国人の方にも牡蠣筏は魅力的な風景に映っていたようです。彼らがスマートフォンで撮影する写真も、圧倒的に筏が多かったそうです。

幻想的な美しさを皆に届けるために

地元の人もこよなく愛するこの情景を、観光する人たちにも紹介したい。
「牡蠣筏に乗せてもらう機会がありました。穏やかな瀬戸内海に浮かぶ筏からの感覚、それは異次元の空間から、未知の光景を眺めるような不思議な感覚でした。その幻想的な美しさを、お客様に知ってもらいたい、もっと間近で見てもらいたい、と思ったのがきっかけです」。

この思いを届けるにはどうしたらいいか、思案した藤里さんでしたが、筏の上で飲食店などの営業は残念ながら法律で認められていません。これは、筏形の船を作り船舶として許可を得るしかないと考え、知り合いの事業家の方に相談し、出資と、設計の概要と運営上の事業計画の立案をしてもらい、船の設計士さんも紹介してもらって船舶としての製造のチャレンジが始まります。

夢を実現するために集まった人々

友人のグラスファイバー製作者(ダイナマックス尾川氏)や鉄工所(佐野製作所)の協力も得て、2020年11月に筏形の船を日本で始めて船舶の許可を得て瀬戸内の海に浮かべることに成功しました。それがHANAIKADAです。これまでに例のない新しい形ですから、安全検査や船舶許可の取得も時間がかかったそうです。YOU-Be株式会社で特許も取得し、藤里さんの熱い思いと展望は周りの人々の協力のもと、とうとう実現したのです。

HANAIKADA は 96㎡の巨大な筏型の船舶です。その上にサンルームの客室64㎡の部屋が乗っている形状です。船の定員は、操縦士とサービススタッフを除くと12名。中にはアームチェアや椅子、テーブルなどがゆったりと置かれており、それらを取り除いて、広いスペースとしてフレキシブルに使うこともできる仕様です。
海面との高低差が僅か 80cm なので海がすぐそこに感じられるHANAIKADA。ドリンクサービスなどを行う大きめのバー&キッチンがあり、トイレもウォシュレット付で男性用と女性用が完備されています。

海面を滑るように航行し、静かに浮かぶ HANAIKADA
目の前に広がる、ウユニ塩湖のような空と海

「海と空。風がピタッと収まった時は、ボリビアのウユニ塩湖のような情景が、ガラス張りの HANAIKADA の目の前に広がります。さざ波さえも起こらないような全くの静寂のなか、空や山々が鏡面になった海に反射して、無限の世界を映しこみます。観音様の寝姿、と呼ばれる厳島(宮島)のシルエットを背景に、満月の日などに、月の道が島影からまっすぐに伸びてくる光景は真に荘厳です」筏に常備されているポータブル電源は、ほとんど音もしないので環境が邪魔されることもありません。

古から伝わる海から巡る神の島巡り

そんな HANAIKADA とクルージングがセットになったプランが、『癒しと発見の宮島絶景クルーズ巡り旅』です。島の周囲は約 30km、「神の島」と呼ばれる宮島には厳島神社以外にも多くの神社が点在しています。その中でも「七浦神社」と呼ばれる、海に面した浦(入江)にある 7 つの神社をクルーザー船で巡りながら宮島を約 80 分かけ 1 周します。
「船で島を1周しながら、7社を巡ることを七浦巡り、または御島巡り(おしまめぐり)と言い、古くから伝わる参拝方法です。織田信長など時の武将たちもお参りしたと伝えられています」。そんな古くから伝わる特別な方法で参拝した後、到着する海に浮かぶ HANAIKADAには、美味しいお弁当が用意されています。

目指す時間は、何も考えない時間

ついつい力が入りがちな日常を送るなか、スポーツ・アクティビティなどを体験するのとは全く違う、全身の力を抜くことのできる時間を体験をして頂きたい、と船長藤里さんは、HANAIKADA で演出される時間について語ります。昼下りの凪の海の体験、夕方の幻想的な海の情景。日暮れから夜にかけて現れる幽玄の月と海。幻の大陸になぞらえ、HANAIKADAの商標登録名も『アトランティス』とし今後生産販売も視野に入れるそうです。

人々のアイデアで、使い方が広がるのが夢

「昼間にパーティーをして、みなさん浮き浮きされますが、やがて日が沈む頃にキャンドルを灯すと、静寂に包まれて、瞑想的で、心が解けるようなリラックスモードに雰囲気が変わります」。海の上に桜の花びらのように浮かぶHANAIKADA。レストランのデリバリーを持ち込んで楽しい仲間たちとワイワイ貸切イベントや、大切な人と過ごす特別な時間のための空間として利用。また、ガラスに囲まれたスペシャルな空間で、自分自身の内面と対峙するために静寂の時間を過ごしてみるなどアイデア次第で使い方は、様々に広がります。

「何度も来ていただくことで、過ごし方も変わってくるでしょう。瞑想的な時間も、自然に訪れるかもしれません。叶わないようなことが叶うような、そんな場所にしたい。皆さんがご家族や友人達と、心に残る特別な時間を過ごす場所として HANAIKADAを使っていただくことが私の夢です」と、船長藤里さんは熱く語ってくれました。